映画「her/世界にひとつの彼女」を観た私の感想と評価
奇才スパイク・ジョーンズ/Spike Jonezが描く、人工知能とのラブストーリーということで、かなり興味深い作品でした。
映画「her/世界にひとつだけの彼女」は作品は第アカデミー賞5部門へノミネートされました。
作品賞、脚本賞、美術賞、作曲賞、歌曲賞です。そして脚本賞を受賞しました。
スパイク・ジョーンズ監督が脚本も手がけました。
私の点数は100満点中85点です。
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「her/世界にひとつの彼女」の感想と評価:人工知能との恋愛
「her/世界にひとつだけの彼女」は、主人公セオドアと人工知能であるサマンサとのラブストーリーです。
人口知能のラブストーリーと言うのは、ちょっと異色でもあります。
さらっとしたSFラブファンタジーをイメージして観たら、意外とメッセージ性のある見ごたえ十分な作品でした。
妻と別れ傷心の日々を送っていた主人公セオドアが、コンピューターや携帯電話から発せられる人工知能OS「サマンサ」の個性的で魅力的な声にひかれていきます。
そして、セオドアは、生身に女性ではなく、次第に“彼女”と過ごす時間に幸せを感じるようになるのです。
前半は、セオドアと人工知能サマンサとの恋愛に不思議な気分にさせられました。
体もない人工知能と恋愛するという異常な恋愛なのですが、意外とすっと馴染んでいて、逆にそれが恐かったですね。
近い未来、このような恋愛が本当に存在するかもしれないと思いゾッとしてしまいました。
この時点では、そこまで映画に入り込めずにいました。
しかし徐々に、セオドアとサマンサとの恋愛が軸なのではなく、セオドアの妻キャサリンと、友達以上恋人未満のエイミーとの関係が軸であることがわかってきます。
セオドアはキャサリンとの離婚に直面しています。
その原因はセオドアにありました。
しかしセオドアはそれを認めようとしなかったのです。
しかし、サマンサとの交流を通して、やっとキャサリンとも自分とも向き合うころができるようになるのです。
セオドアはサマンサに対して、
「キャサリンとうまくいかなかったのは、自分が感情を出さなかったこと。何かにイライラしていても口に出さずに、彼女の不安を否定するだけだった。これからはちゃんと感情と出す。」と話します。
そしてサマンサは、
「セオドアはいつも恐怖を感じている。その恐怖を取り除いてあげれば、孤独と感じなくなる」と話します。
二人の成長が感じられるシーンでした。
そして、本当にその通りだな…と思いました。
そして、キャサリンとの関係にしっかりと終止符を打ったセオドアは、次の恋愛の相手であるエイミーときちんと向き合おうとするのです。
終始、人工知能サマンサとのラブストーリーだったのなら薄い内容になっていたかもしれません。
しかし、キャサリンとエイミーとの恋愛をバランス良く混ぜ合わせたことで、とても深みのある物語に仕上がっていました。
「her/世界にひとつの彼女」の感想と評価:近未来の描き方のおもしろさ
舞台は近未来のロサンゼルスという設定です。
この近未来の描き方が実に面白かったです。
スパイク・ジョーンズ監督ならではの映像の面白さが随所に散りばめられていました。
服装や街並みはどこかレトロな雰囲気がありました。
監督によると1920年代をイメージしていたんだとか。
超高層ビルが並ぶ都市の背景は、上海の浦東(プートン)で撮影されたとの事です。
なるほどね。と思いました。
上海は、何度も訪れた事がありますが、いつ行っても上海の浦東(プートン)の超高層ビル群は圧巻で、何とも言えない雰囲気があります。
上海の超高層ビルって近代的でもあり、レトロっぽくもあり、まさに近未来ってイメージですものね。
また、レトロをイメージしていたのですが、携帯電話ではなく、イヤホンを耳に入れながら会話をしていたり、当たり前のように家にバーチャルゲームがあったり、人工知能の存在が認められていたり、未来的な要素もたくさんあります。
このバランスが面白かったですね。
近い将来本当に起きそうな世界でした。
さらに面白いのが色使いです。
終始セピア色のような、ちょっと寂しげな孤独な雰囲気があるのですが、その中に赤やオレンジの差し色が取り入れられています。
オフィスの壁やセオドアのシャツの色など、赤が色々なところに使われています。
この暖色系の色が効果的に使われていることにより、寂しげなセピア色にじんわりとした暖かみが生まれます。
素晴らしい色使いでしたね。
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「her/世界にひとつの彼女」の感想と評価:スカーレット・ヨハンソンと人工知能の関係について
人口知能サマンサの声を演じているのはスカーレット・ヨハンソンです。
初めて観た時は、スカーレット・ヨハンソンの声のイメージが強すぎて、体のない人工知能であるサマンサなのですが、どうしてもスカーレット・ヨハンソンの姿がちらついてしまいました。
そこで吹替版で見てみました。
サマンサの声演じている声優さんは、数多くの作品で活躍している方ですが、私はこの方の顔を見たことがなかったので、サマンサを人工知能と感じながら鑑賞することが出来ました。
この違いは結構大きかったです。
実は、この人口知能の声については、スパイク・ジョーンズ監督、とてもこだわりがあったようです。
それはそうでしょうね。この声って大事だから。
そもそも、もとものこのサマンサ役の声は、映画「マイノリティ・レポート」で知られるサマンサ・モートン/Samantha Mortonだったのです。
この女優さんです。
エイミー・アダムスがエイミー役であるように、このサマンサ役もサマンサ・モートンの実名からとって、サマンサにしたのです。
しかし、全部の吹き替えの録音が終わったあと、どうしても監督がイメージしていた声を違うと言うことで、スカーレット・ヨハンソンに変更してしまったのです。
私としては、一度、サマンサ・モートンの声も聞いてみたいです。
全部の録音が終わってから、全部、使われなくなって、別の女優さんの声に吹き替えを取り直しただなんて、スパイク・ジョーンズ監督のこだわりでしょう。
それにしてもサマンサ・モートンさん、せっかく練習して、録音終わって、キャンセルされるだなんて、ショックだったでしょうね。
将来、人口知能との恋はあるのでしょうか?
数年前に、この映画「her/世界にひとつだけの彼女」を観たのなら、人が人口知能の声と恋をするだなんて・・・。
そのテーマだけで、「ありえない!嘘っぽい!」と思ったでしょう。
人間である私たちが、生身の男性や女性ではなく、人口知能と過ごす時間に幸せを感じるようだなんて、リアリティを感じられなかったと思います。
でも、現代は、すっかり昔と変わっています。
お年寄りから子供まで一人皆が、スマートフォンを持つ時代になって、電車の中でも、喫茶店でも、皆がスマートフォーンとにらめこしています。
時には、喫茶店やレストランでも、一言もしゃべらないで、お互いのスマートフォンに夢中のカップルも見かけます。
人と話すより、自分のペースで一人で好きなページ見ている方が心地よいのでしょう。
また、一人暮らしの高齢の方に、大人気の「しゃべる犬のぬいぐるみ」と言うのも大人気です。
実は、私の母も一人暮らしなのですが、この「しゃべる犬のぬいぐるみ」を持っているのです。
知人からプレゼントされて最初は、ただのぬいぐるみ!と思っていたけれど、抱きしめたら、話しかけてくれ、その言葉がタイミング良い時は、嬉しく癒されるとか・・・。
こんな「しゃべる犬のぬいぐるみ」も、今後どんどん進化していくでしょう。
それこそ人口知能のついた賢いペットであれば、トイレの世話もしなくていいから人気も出てくるかもしれませんね。
それがもっともっと進化して、ペットだけでなく、子供や、恋人にまで発展するかもしれませんね。
ちょっと、「しゃべる犬のぬいぐるみ」にまで話が脱線してすみません!
でも、時代が変わってきている事は明らかです。
人口知能サマンサのスマホでの画面はこんなのですが、iPhoneの「Siri」の進化版とも言えますね。
iPhoneの「Siri」も、まだ満足できる段階ではないですが、もっとOSが進化していけば映画「her/世界にひとつだけの彼女」のサマンサに近づくかもしれませんね。
この映画「her/世界にひとつだけの彼女」のような世界は、遠い未来ではなく、本当に近い未来に、普通になるかもしれないと思いました。
映画「her/世界にひとつだけの彼女」の人工知能との恋愛。
映画を観る前は、あまり入り込めない内容かなと思っていたのですが、映画を観た後は、空想の世界でなく、起こりうる近未来のお話だなと思うようになりました。
また、人口知能との恋だけでなく、他の女性たちとの関係をリンクさせることで、リアル感が生まれ、すっかり引き込まれてしまいました。
すごくおしゃれな作品なのですが、おしゃれだけではない芯のある興味深い作品でした。
では、次は、映画「her/世界にひとつだけの彼女」で監督と脚本を手がけた奇才スパイク・ジョーンズについて見てみましょう!
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