映画「ノー・エスケープ 自由への国境」は、完全にガエル・ガルシア・ベルナルのための映画でした。
ガエル・ガルシア・ベルナルは、1978年生まれのメキシコ人俳優。
メキシコで子役をしていた彼は、メキシコ映画界で活躍した後、ハリウッド進出を果たしました。
現在はハリウッド映画、メキシコ映画やヨーロッパ映画で活躍しています。
今最も活躍しているメキシコ俳優と言えるでしょう。
端正な顔立ちと優れた演技力を持つ魅力的な俳優です。
ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品
そんなガエル・ガルシア・ベルナルの作品の中から個人的におすすめしたい3品をご紹介したいと思います。
ガエル・ガルシア・ベルナル/Gael Garcia Bernal
生年月日:1978年11月30日
出身地:メキシコ
(1)ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:3位「バベル」のあらすじと感想
まずはおすすめ3作品のうちの第3位。
ガエル・ガルシア・ベルナルのハリウッド進出作品となった「バベル」(2001年)です。
ブラット・ピット、ケイト・ブランシェットなどのハリウッドスターや、役所広司、菊地凛子などの日本人も出演し、話題となった作品です。
ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:「バベル」のあらすじ
モロッコのアブドゥラの息子であるアフメッドとユセフは父の銃で試し打ちをしていました。
この銃はもともと日本人ヤスジローが所有していたものでした。
兄弟で競い合ううちに、ある観光客を乗せたバスを撃ってしまいます。
二人は銃を隠して逃げます。
しかしすぐに警察に見つかりアルフレッドは警察の銃撃に倒れてしまいます。
兄弟が放った銃弾は、バスの中の乗客のスーザンに当たっていました。
スーザンは夫のリチャードとの夫婦仲を改善するために外国旅行をしていたのです。
子供たちはベビーシッターのアメリアに預けていました。
リチャードは銃弾を受けたスーザンに治療を受けさせるために、バスを降りて村に向かいます。
無事に医者に処置をしてもらうのですが、暑さに耐えきれないバスの乗客たちは、スーザンたちを待たずに出発してしまいました。
東京では、耳の不自由な女子高生チエコが、満たされない日々に不満を募らせながら、過度に男性を誘惑する生活を送っていました。
母が自殺したことで、父ヤスジローとの関係も悪くなっていたのです。
ある時、チエコのもとに刑事が訪ねてきてヤスジローの銃について質問してきました。
モロッコでのある事件に関わっていると言うのです。
チエコは刑事の1人を誘惑します。
しかし刑事に相手にされないチエコは裸で立ち尽くし泣きます。
そこへ戻って来たヤスジローはチエコを優しく包むのでした。
不仲だったリチャードとスーザンでしたが、このような状況の中で、お互いに和解して絆を取り戻していました。
救急ヘリがやってきて、2人は無事に病院に運ばれます。
そして病院から子供達に電話をかけるのでした。
リチャードとスーザンの子供たちを預かっていたアメリアは不法就労者でした。
メキシコの結婚式は出席する予定だったのですが、スーザンとリチャードの帰国が遅れたために、しかたなく子供たちを連れてメキシコの結婚式に出席することに。
無事に式が終わり甥のサンディエゴの運転する車に乗って国境を越えようとしたのですが、酔っぱらっていたサンディエゴは国境を強行突破してしまい、アメリアとリチャードとスーザンの子供たちは砂漠地帯に置き去りにされてしまいます。
アメリアは助けを求めた警察から、不法就労者であるとして逮捕されてしまい、メキシコに強制送還されてしまいます。
子供たちは無事に保護されるのでした。
ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:「バベル」の感想
「アモーレス・ペロス」ですっかり大ファンになったアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督とガエル・ガルシア・ベルナルが再びタッグを組むということで期待していましたが、その期待を上回る最高傑作でした。
タイトルの“バベル”とは、旧約聖書に描かれている「バベルの塔」のこと。
人は思い上がり、神に近づこうと天にも届く塔を建てました。
しかし、神はそれに怒り、その塔を壊し、人の言葉をばらばらにしてしまったのです。
世界中の違った場所にいる人々も、結局は繋がっているのだということがテーマになっているのだと思います。
1発の銃弾により、モロッコ、アメリカとメキシコ、日本の3つのエリアでの出来事が繋がっていきます。
各国を舞台にバラバラに散りばめられた全然違ったエピソード。
これが、強力な磁石のようにくっついて、だんだんと一つになっていきます。
その絶妙な絡み合いにぐいぐい引き込まれました。
ブラッド・ピットをはじめ、各国の大物俳優たちが出演していますが、とてもバランス良く使われているので、それぞれの味が引き出されています。
日本のエピソードもなかなか良かったですね。
監督の映画への熱意と挑戦する意欲が詰まった躍動感溢れる作品でした。
とても満足感のある映画でした。
(2)ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:2位「No」のあらすじと感想
ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ作品第2位は、比較的最近の作品の中から「No」という作品です。
1988年に実際に行われたチリの国民投票。
そのYes派とNo派の戦いた社会派作品です。
アカデミー賞で外国語映画賞のノミネートされた作品でもあります。
ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:「No」のあらすじ
CMディレクターのレネのもとに、共産党の議員がやってきます。レネに国民投票に向けてPR映像を作ってほしいと依頼します。
15年にわたりチリで独裁政治をしてきたピノチェト将軍に対し国民帳票が行われることになっていたのです。
ピノチェト政権Yes派とNo派は、それぞれのPR映像を作っていました。
レネが見せられたNo派の作った映像は、独裁政治による被害を描き、その悲惨さを訴える内容となっていました。
これを見たレネは「これでは人の心は動かない、明るく楽しいものを描くべき」と助言します。
そしてレネはスタッフを集めて、新たなNo派のPR映像作りを始めます。
辛く苦しいものではなく、明るく笑いの溢れた内容にしたのです。
しかしNo派の人々は否定的な反応でした。
独裁政治を否定する内容が入っていない、不謹慎であると批判されます。
レネ達スタッフは、自宅や車にらくがきをされるなどの嫌がらせを受ける中、ついにPRが出来上がります。
キャンペーンが始まり、YES派は「伸びゆく国」と真面目な内容の映像でした。
一方レネたちの作ったNo派の映像は、明るく喜びや希望に満ちたインパクトのある映像でした。
このNo派のCMが国民に支持され始めます。
レネは様々な嫌がらせを受けながらも新しい映像を作り続けます。
No派のCMの反響の大きさに脅威を感じるYes派は、No派と似た内容のCMを作って対抗したり、ネガティブキャンペーンを行って戦いますが、レネたちが次から次へと作り出す斬新なCMの力には及びません。
そして迎えた国民投票の日。結果は見事No派の勝利をおさめます。
スタッフたちは大きな盛り上がり。
しかしこの勝利の立役者であるレネだけは、静かに会場を後にします。
息子を抱いて、歓喜に溢れる町の様子を見るのでした。
ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:「No」の感想
社会派作品に多く出演しているガエル・ガルシア・ベルナル。
メキシコ出身のガエル・ガルシア・ベルナルにとって、チリでの独裁政治は遠い国での出来事ではありませんでした。
身近にピノチェト政権から逃れてメキシコにやってきた人々がいたのです。
そのため、この作品に対する想いも強かったと語っています。
登場人物が多く、関係も複雑なので、しっかり見ていないと難しいとこともありましたが、難しい社会派作品というよりも、サクセスストーリー的な要素が大きかったと思います。
「CMは世界を変えられるのか」がテーマとなっています。
Yes派に対抗するためにNo派が考えたCM戦略は、ピノチェト政権の残酷さを映し出して訴えるものでした。
しかし、CMについて知り尽くしているレネは「これでは人は動かない」と言い切ります。
人を動かくためには、喜びや笑い、楽しさ、希望がなければいけないと主張します。
結果として、このレネの考えは正しく、CMは大反響となり、国民の心をしっかり掴みます。
そして最後にはこのCMの力によりNo派はまさかの勝利を収めるのです。
このサクセスストーリーに引き込まれました。
社会が変わる瞬間をとてもドラマチックに描いていました。
また、政治色が強い作品ですが、主人公のレネ自身は政治的に関わっているわけではありません。
レネは政治に対する想いというよりも、広告屋としてのプライドを持って戦っていたのです。
これがこの作品の面白いところだと思います。
この歴史的国民投票を描くにあたり、もっと政治的な人物を主人公にするのが自然だと思います。
しかし、敢えて広告マンを主人公にしたところに面白さがありました。
このレネの目を通して描くことで、この歴史的事実に対して、色々な視点から見ることができました。
歴史的出来事の裏側にこんな人物がいたのだということを知ることができて、また1つ勉強になる映画でもありました。
1988年のカメラを使ってというアナログな映像も良かったですね。
当時の雰囲気が伝わってきてドキュメンタリー映画を見ているような感じもありました。
ガエル・ガルシア・ベルナルの戦う広告マンの姿、ぜひご覧になってみてくださいね。
(3)ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:1位「天国の口、終わりの楽園」のあらすじと感想
ガエル・ガルシア・ベルナルおすすめ作品第1位は、「天国の口、終わりの楽園」(2001年)です。
ガエル・ガルシア・ベルナルは、この作品でヴェネツィア映画賞の新人賞を受賞しました。
世界的にブレイクするきっかけとなった作品でもあります。
ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:「天国の口、終わりの楽園」のあらすじ
舞台はメキシコ・シティ。
17歳のフリオと親友のテノッチは、高校を卒業した夏を過ごしていました。
二人とも恋人がいるのですが、彼女たちはヨーロッパ旅行へ行ってしまいました。
目的もなくダラダラを自由気ままな毎日を送るフリオとテノッチ。
そんなある日、テノッチの親戚の結婚式である女性と知り合います。
テノッチのいとこの妻であるスペイン女性ルイサです。
フリオとテノッチはルイサの美しさに目を奪われますが、ルイサは年下の若いフリオとテノッチを全く相手にしていません。
そんな中、ルイサは夫が浮気をしていた事実をしり大ショックを受けます。
そして、テノッチとフリオが以前話していた「天国の口」という場所に行こうと言います。
ルイサとフリオとテノッチの3人は、車に乗り「天国の口」を目指して旅に出ます。
旅の途中、ルイサはフリオともテノッチとも関係を持ちます。
奇妙な関係の中、フリオとテノッチは、あることがきっかけでケンカになります。
テノッチはフリオの彼女と、フリオもテノッチの彼女と浮気をしていたことが明らかになったのです。
しかし二人は和解してまた旅を続けることにします。
そしてついにサンベルナの美しい海に到着して3人は美しい時間を過ごします。
そしてルイサはこの土地に残ることにします。
ルイサは実はガンを患っていたのでした。
フリオとテノッチはメキシコ・シティに帰っていきました。
そしてその後それぞれの道へ進むフリオとテノッチは疎遠になっていきました。
しばらくして大学で再会する二人。
テノッチはフリオにルイサが亡くなったことを話すのでした。
ガエル・ガルシア・ベルナルのおすすめ3作品:「天国の口、終わりの楽園」の感想
ガエル・ガルシア・ベルナルを世界的に有名にした作品であり、本国メキシコではその年最も興行収入の良かった作品でもありました。
ちょっと不自然な関係の3人が旅をする青春ロードムービーです。
少年と大人の間にいる2人の青年と1人の美しい大人の女性。
過激な会話や描写が多く、初めはちょっと過激な青春映画かなと思って観ていたのですが、後半にはメキシコの抱える重い雰囲気や貧富の差の問題などがしっかりと描き出されることで、厚みのある作品になっていました。
ロードムービーならではの、走る車から見える景色が美しく描かれているのですが、ヨーロッパの田園風景や、アメリカの広大な大地などの美しさとはちょっと違います。
乾いて殺伐とした景色なのです。
メキシコの影の部分が感じられます。
しかし、なぜか暗い、重い雰囲気ではなく、美しく爽やかさもあるのです。
メキシコ出身であるアルフォンソ・キュアロン監督のメキシコ愛がこもっているからこその映像だったと思います。
ルイサがガンに侵されているという厳しい現実が明るみになる中、まぶしく照り輝くメキシコの太陽、そしてメキシコの陽気な音楽。このコントラストも素晴らしかったです。
主演のガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナも良かったですね。
メキシコの大人気俳優2人の共演というだけでも、本国では話題の作品でした。
この旅の中で少年から大人へと移り変わる青年の成長を熱演していました。
非常に仲の良い2人なのですが、旅を終えた後は、あっさりそれぞれの道を進んで疎遠になってしまいます。
その切なさも良かったですね。
学生時代に仲が良く毎日一緒にいると、この友情が一生続くように思います。
しかし社会人になったり環境が変わってしまうと自然に離れていってしまうものです。
しかし、青春時代をともにした思い出や絆はずっと残っていきますよね。
そんなリアルな友情に心打たれるラストでした。
ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナは、私生活でもとても仲が良いことでも有名です。
実生活でもいつまでも友情が続いているのが素敵ですね。
爽やかな青春映画でありながら、シリアスな部分もあり、なかなか深い作品です。
久しぶりに観てみると、また違った感じ方ができる作品だと思います。
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